広島の不動産価格は今後どうなる?専門家が分析する最新市況と2026年の展望

【この記事の監修者】 不動産アナリスト

  • 宅地建物取引士 / 不動産コンサルティングマスター
  • 経歴:大手不動産デベロッパーにて20年以上、広島都市圏の市場調査・分析を担当。現在は独立し、不動産コンサルタントとしてメディアでの解説や講演活動も行う。広島の再開発動向と地域経済に精通し、データに基づいた的確な分析に定評がある。

広島市の不動産価格は、駅周辺の再開発やインバウンド需要の回復を背景に、近年注目を集めています。2025年に入ってもその勢いは衰えず、中心部では上昇傾向が続いています。しかし、「この価格上昇はいつまで続くのか?」「これからマイホームの購入や売却を考えても良いのだろうか?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、最新の公的データと市場動向を基に、不動産の専門家が広島市の不動産価格の現状を徹底分析。価格を左右するプラス要因・マイナス要因を整理し、2026年に向けた今後の展望をエリア別・物件種別で予測します。

目次

【総論】広島市の不動産市況:中心部と郊外で異なる値動き

2025年現在の広島市の不動産市場は、「都心部の価格上昇と、郊外エリアの安定・横ばい」という二極化の傾向がより鮮明になっています。

国土交通省が発表した2025年の公示地価では、広島県全体で平均+3.03%の上昇となりました。特に広島市中区は+5.16%、南区は+5.62%と、中心市街地や広島駅周辺の伸びが全体を牽引しています。この背景には、後述する大規模な再開発事業への期待感があります。

一方で、安佐南区や佐伯区などの郊外エリアでは、緩やかな上昇や横ばい、一部では下落も見られます。利便性の高い一部の住宅地では需要が底堅いものの、市全体で見るとエリアによる価格動向の違いが明確になってきているのが現状です。


データで見る!広島市の不動産価格の最新動向

具体的なデータから、広島市の不動産価格の「今」を詳しく見ていきましょう。

地価:中区・南区の商業地、住宅地ともに力強い上昇

2025年の公示地価では、広島市の中心商業地である中区八丁堀が前年比+3.86%と高い伸びを記録しました。また、広島駅南口に位置する南区京橋町では+18.90%という驚異的な上昇を見せるなど、再開発エリアへの投資意欲の高さがうかがえます。

住宅地においても、交通の便や生活利便性の高い中区や西区、南区の物件は引き続き需要が旺盛で、地価を押し上げています。

中古マンション:価格は上昇傾向も、築年数による差が拡大

中古マンション市場も活況を呈しており、特に広島駅や八丁堀周辺のタワーマンションや築浅物件は、新築物件の価格高騰を背景に需要が集中し、価格が上昇しています。直近3年間でも広島県の中古マンション価格は緩やかな上昇を続けています。

ただし、築年数が経過した物件や、中心部から離れたエリアの物件については、価格が伸び悩む傾向も見られ、物件の立地や管理状態による価格差が大きくなっています。

一戸建て:土地価格の上昇が販売価格に影響

新築一戸建ては、建築費の高騰と都心部の土地価格上昇を受け、販売価格も上昇傾向にあります。アットホームのデータによると、広島市中心部(中区、南区など)では4,000万円を超える物件も珍しくありません。

注文住宅の場合も土地取得費用が大きな割合を占めるため、予算内で希望のエリアに住むためには、郊外の安佐南区(平均3,390万円)や佐伯区(平均3,380万円)なども視野に入れる必要があります。


広島の不動産価格を押し上げる3つのプラス要因

なぜ今、広島の不動産価格は上昇しているのでしょうか。その背景にある3つの大きな要因を解説します。

1. 「100年に一度」とも言われる都心部の再開発プロジェクト

現在の広島市の不動産市場を語る上で、大規模な再開発事業は欠かせません。特に市の東西の核と位置付けられる「広島駅周辺」と「紙屋町・八丁堀地区」では、複数のプロジェクトが同時進行しています。

  • 広島駅ビルプロジェクト (2025年春開業):新しい駅ビルが開業し、商業施設やホテルが一体となった新たなランドマークが誕生。人の流れを大きく変える起爆剤となっています。
  • 紙屋町・八丁堀地区の再開発: 複数のビル建て替え計画が進行中で、2027年度以降の完成を目指し、国際水準のビジネス・商業機能の集積が図られています。

これらの再開発は、新たな雇用の創出や交流人口の増加に繋がり、オフィスや住宅の需要を高めるため、不動産価格にとって強力なプラス要因となります。

2. インバウンド需要の完全回復と交流人口の拡大

平和記念公園や厳島神社という世界的な観光資源を持つ広島は、インバウンド需要の恩恵を大きく受ける都市です。観光客の回復は、ホテルや商業施設の収益改善に直結し、商業地の地価を押し上げます。また、国内外からの交流人口の増加は、街全体の活性化に繋がり、住宅需要にも良い影響を与えます。

3. 歴史的な低金利環境の継続

住宅ローン金利が依然として低い水準で推移していることも、不動産市場を支える大きな要因です。マイホーム購入希望者にとって、資金調達がしやすい環境は、購買意欲を後押しします。当面はこの低金利環境が続くと見られており、住宅需要は底堅く推移するでしょう。


知っておくべき懸念材料と今後のリスク要因

一方で、手放しで楽観視はできません。広島の不動産市場が抱える懸念材料についても正しく理解しておく必要があります。

1. 市内でもエリアによって異なる人口動態

広島市全体の人口は微減傾向にありますが、区別に見ると状況は異なります。市の推計では、今後、東区や安佐北区、南区などで人口減少が見込まれています。人口の減少は、長期的にそのエリアの住宅需要を低下させ、不動産価格の下落圧力となる可能性があります。

2. 終わりが見えない建築費と人件費の高騰

建設業界における人手不足や、資材価格の高騰は、新築マンションや一戸建ての価格を押し上げる直接的な原因となっています。このコスト上昇分が販売価格に転嫁され続けると、購入者の予算を超えてしまい、需要が伸び悩むリスクも考えられます。

3. 金利上昇への警戒感

現在は低金利が続いていますが、将来的な金融政策の変更により金利が上昇する可能性はゼロではありません。住宅ローン金利が上昇すれば、購入者の返済負担が増え、不動産需要が冷え込む可能性があります。


【2026年展望】専門家による広島の不動産価格予測

これらのプラス要因とマイナス要因を踏まえ、2026年の広島市の不動産価格がどう動くかを予測します。

エリア別予測

  • 中区・南区 (特に広島駅、八丁堀周辺)
    • 展望:強気
    • 再開発のインパクトが最も大きいエリア。オフィス需要、住宅需要ともに旺盛で、2026年にかけても価格は力強く上昇する可能性が高いでしょう。特に交通利便性と生活利便性を兼ね備えたタワーマンションや駅近物件は、引き続き高い資産価値を維持すると予測します。
  • 西区・東区 (横川、光町など)
    • 展望:やや強気
    • 都心へのアクセスが良いこれらのエリアも、再開発の恩恵を受ける形で安定した需要が見込めます。緩やかな価格上昇が続くでしょう。特に横川駅周辺などは、独自の魅力があり、若者やファミリー層からの人気が底堅いエリアです。
  • 安佐南区・佐伯区など郊外エリア
    • 展望:横ばい
    • 利便性の高い一部の地域(アストラムライン駅周辺など)では底堅い需要が続きますが、エリア全体としては価格は横ばい、もしくは緩やかな下落の可能性も視野に入れる必要があります。人口動態や地域の商業施設の状況など、よりミクロな視点での物件選びが重要になります。

物件種別予測

  • 新築・築浅マンション:建築費高騰の影響で高値が続きますが、都心部の物件は需要が供給を上回る状況が続き、高値を維持するでしょう。
  • 中古マンション:都心部の好立地物件は引き続き上昇。郊外や築古物件は、価格の二極化がさらに進むと予測されます。
  • 一戸建て:土地価格と建築費に左右される状況は変わりませんが、郊外の住環境の良いエリアでは、テレワーク需要などを背景に一定のニーズが見込まれ、価格は安定的に推移するでしょう。

【専門家からのアドバイス】今、不動産を買うべきか?売るべきか?

<購入を検討している方へ> 都心部の価格上昇は続いていますが、まだ歴史的な低金利の恩恵を受けられる状況です。2026年にかけても中心部の資産価値は下がりにくいと予測されるため、将来的な資産価値を重視するなら、早めの検討も一考の価値ありです。ただし、高値掴みには注意が必要です。郊外を検討する場合は、将来の人口動態や地域の開発計画などをしっかりとリサーチし、長期的な視点で物件を選びましょう。

<売却を検討している方へ> 広島市中心部に物件をお持ちの場合、市場が活況な今は絶好の売り時と言えます。再開発への期待感が高まっているため、高値での売却が期待できます。複数の不動産会社に査定を依頼し、市況を正確に把握した上で、売却戦略を立てることをお勧めします。郊外の物件については、焦らず、地域の需要を見極めながら売却活動を進めることが賢明です。


まとめ

広島市の不動産市場は、「再開発が進む都心部」「安定した住環境が魅力の郊外」という異なる特徴を持ち、2026年に向けてもその二極化傾向は続くと予測されます。

価格上昇が期待されるエリアがある一方で、人口減少などの長期的なリスクも存在します。重要なのは、最新のデータやニュースに常にアンテナを張り、マクロな市場動向と、自分が関心のあるエリアのミクロな地域性の両面から不動産市場を理解することです。

本記事が、皆様の広島での不動産購入・売却における最適な意思決定の一助となれば幸いです。


【免責事項】 本記事は、公的な情報や各種報道に基づいて作成されていますが、その正確性や完全性を保証するものではありません。不動産の購入・売却は、個別の物件状況や経済状況によって大きく結果が異なります。最終的な投資判断は、ご自身の責任において行われますようお願い申し上げます。

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